「競売」がなぜ、解決策なのか?と疑問の声が上がりそうですが、「競売」も売却の方法のひとつです。
時と場合によっては、「競売での売却」を選択する方がメリットがあることがあります。
【競売のメリット】
1.任意売却よりも高値で売れるケースがあり、債務が減らせる。
昨今の不動産バブルにより競売市場も落札価格が高騰しています。
平均して、競売の売却基準価格(時価の6~7掛位)の1.5倍以上で落札されています。
ひと昔前の「競売は安い」という常識では無くなっています。
任意売却で売れなかった物件が、競売で高値で売れた。という事例も多いです。
ただし、地方や条件の悪い物件は安値で落札されたり、入札が入らず不売となることもあります。
2.共有名義人や占有者が売却に協力しない場合等、任意売却が難しい場合でも売却できる。
売却する場合、共有名義人の協力が不可欠ですが、協力してくれない、行方不明で連絡が取れない等場合があります。
また占有者がいて、追い出すのに時間とお金がかかり売却ができないというケースもあります。
そういった場合でも、競売なら売却することは可能です。
所有権は裁判所が職権で移転するので、共有名義人の印鑑等は必要ありません。
また、占有者の退去手続きについては競売を落札した人が行います。
3.住宅ローン以外の債権者や差押権者が担保解除に応じてくれない場合でも売却できる。
住宅ローン以外に事業融資等を借りている、税金の差押がある等の場合、任意売却の場合は全ての債権者に担保解除をしてもらう必要がありますが、競売の場合は担保解除してくれなくても売却が可能となります。
どうしても他の債権者が承諾してくれず任意売却ができないという場合は競売での売却に切り替えていくとスムーズです。
4.部屋の内見や契約手続きをしなくても裁判所が勝手に売却を進めてくれる。
煩わしい手続きをしたくない、内見ができない事情があるなど、売却手続きができない、という方は、競売だと裁判所が手続きをしてくれるので、売却が可能となります。
ただし、下記図の④の時には、裁判所の執行官と不動産鑑定士が自宅の調査をするので、内見に協力しなくてはなりません。
売却後、各債権者への配当手続きも裁判所が行ってくれますが、残債が残った場合は、任意売却で売却した場合と同様、残債を支払っていかなくてはなりません。
5.任意売却よりも長く自宅に住んでいられる。
任意売却は、売却して所有権の移転と同時に自宅を明け渡さなければなりませんが、(親族間売買やセール&リースバックで住み続けられる場合を除く)
競売は、入札、開札、売却決定、所有権移転まで時間がかかります。
明け渡しに関しては、競売で落札した人との交渉となりますが、所有権移転後の明け渡しでも応じてくれるケースもあります。
明け渡しをしない場合は、競売で落札した人から強制執行の手続きをされ、裁判所から強制的に退去をさせられますが、そこまでいくにも時間がかかります。
状況に応じてことなりますが、競売で売却する方が任意売却で売却するよりも長く住んでいられる可能性が高いです。
※競売落札、代金納付まで残債務に対して遅延損害金が発生するのと、競売に係る費用(60~200万)も請求され、債務は膨らむことになります。
また、競売で知人や第三者に落札してもらい、そのまま住み続けるという方法もあります。
入札に参加できない人は、債務者本人、つまりお金を借りて払えなくなった人は競売の入札に参加できません。
本来、借りたお金は全額返済しなくてはならないので、その立場にある債務者は、競売の入札をして不動産の所有権を得るという権利は、無いということなのです。
民事執行法で下記の通り定められています。
(債務者の買受けの申出の禁止)
第68条 債務者は、買受けの申出をすることができない。
(売却不許可事由)
第71条 執行裁判所は、次に掲げる事由があると認めるときは、売却不許可決定をしなければならない。
2.最高価買受申出人が不動産を買い受ける資格若しくは能力を有しないこと又はその代理人がその権限を有しないこと。
3.最高価買受申出人が不動産を買い受ける資格を有しない者の計算において買受けの申出をした者であること。
上記、3.にあるとおり、「不動産を買い受ける資格を有しない者の計算において」
とありますが、これは簡単に言うと、
「債務者がお金を用意して、別の名義人が入札したことが発覚した場合」をさし、その者が最高買受価格を出しても売却不許可になってしまいます。
よく、自分は入札できないから、奥さんや子供に入札させるという風に考える方もいるのですが、落札した場合、資金経路が債務者だと判明した場合すると、売却の許可が出ません。
債務者以外の資金だとしても世帯を同じくしている人の場合だと、疑わしい場合もあり、不許可になるケースもあるようです。
また、
- 物上保証人
- 連帯保証人
- 第3取得者
- 債務者でない不動産所有者
は入札参加することが可能で、落札した場合は、売却許可が下ります。
(別途不許可理由がある場合を除く)
どうしても競売で落札して住み続けたい、という場合は競売の落札サポートのご相談もお受けしています。
但し、競売で落札できる保証はありません。
任意売却でも競売でも、不動産売却額よりもローン残額がオーバーしていたら、担保は外れても「無担保」の残債務は残ります。
原則、その無担保債権には遅延損害金が加算され続けます。
債務の処理方法としては、大きく分けて2つあります。
1.法的整理
法的に債務を整理する方法です。主な方法として、以下の3つがあります。
①自己破産
債務者が自己の財産を換価処分して債権者に配当し、それでも支払い切れない場合に債務の支払い義務を免除(免責)してもらう手続きです。
免責が下りれば借金はゼロになり、免責後に財産を築いても免責前の借金を返済する必要はありません。ただし、自由意志により返済することは認められています。
②個人再生
裁判で借金総額を大幅に減額してもらい、それを決められた期間で分割払いにしてもらう制度です。自己破産と異なり、返済を続けなくてはなりませんが、財産の処分が必須ではなく、職業制限もないため、自己破産ができない事情がある人にはメリットがある方法です。
また、住宅資金特別条項という制度が利用できれば、住宅ローンはそのまま継続でき、自宅を売却せずに他の債務を整理することも可能です。
③任意整理
弁護士が債務者に代わって債権者と交渉し、利息のカットや長期分割払いなどを認めてもらって返済可能な返済条件に変更することです。
これは裁判外の手続きなので、法的な制限が少ないというメリットはありますが、住宅ローンの残債務に関する整理には適さず、少額債務の場合によく利用される方法です。
その他、特定調停を利用する、消滅時効を援用するなどの方法もありますが、任意売却後の残債務に関していえば、利用されることが多いのは、自己破産か個人再生がほとんどです。
法的整理のメリットとしては、以下の点が知られています。
- 合法的に借金がゼロになる
- 弁護士が代理人になるので、債権者と直接やり取りすることがなく、精神的に安心
- 債務がなくなることで、生活をリセットできる
- 相続人に借金を残さなくてすむ
- 免責後は資産形成が可能
一方、法的整理のデメリットとしては、以下の点があります。
- 財産を失う(99万円以下の現金は失わない)
- 解約返戻金20万円以上の生命保険は解約しなければならない
- 保証人がいる場合、迷惑がかかる(場合によっては保証人も法的整理が必要になる)
- 職業、資格制限がある
- 官報に住所と名前が載る
- クレジットカードが使用できなくなる
- 破産期間は旅行や引越しが制限される
- 破産費用がかかる
(破産:同時廃止20~40万円、管財事件50万円~、個人再生:50万円~)
2.私的整理
私的整理とは、法的整理によらず、債権者と債務者との自主的協議により、債務の返済をしていく手続きのことです。
これには明確な規定はなく、債権者の意向や債務者の状況などで返済方法が異なる可能性があるため、一般論として具体例を挙げることはできません。
住宅ローンの残債務の無担保債権に関する私的整理の処理方法はおおむね以下の通りです。
①支払える額の返済で交渉
任意売却の決済前に生活状況報告書や返済可能金額について申告させる債権者もあるので、無理のない支払い金額で交渉できる余地はあります。
この場合、「返さない」のではなく、「返せない」という状況を誠意をもって伝え、「いくらなら返せるのか」を理解してもらうことが大切です。
②サービサーとの交渉
債権回収会社(サービサー)とは、金融機関から債権の委託を受け、あるいは債権を譲り受けて回収を行う、法務大臣の許可を得た民間の債権管理回収専門業者です。
「委託」の場合は、分割返済で全額返済をしないと、原則として債務はなくなりません。住宅金融支援機構はサービサーに回収委託をしているため、全額返済をしないと債務は残り続けます。ただし、遅延損害金については、元金を完済した場合には減免または免除してもらえるケースもあります。
「譲渡」の場合は、サービサーは債権を銀行から安く買い、高く回収することを事業としています。そのため債務全額ではなく、ある一定の金額の一括返済による和解ができる可能性があります。これにより債務がなくなったというケースも実際にあります。
ただし私的整理なので、「こうすればこうなる」と断言はできませんし、サービサーは債権回収のプロのため、安易なやり方で臨むと痛い目にあうこともあります。
私的整理のメリットとしては、以下の点があります。
- 手続きに費用がかからない
- クレジットカード等がそのまま使用できることもある
- 家族や周りにわかりにくい
- 自己破産しなくてすむ
- サービサーとの交渉で債務が圧縮できる可能性
一方、私的整理のデメリットとしては、以下の点が知られています。
- 相続人に債務が相続されてしまう
(それを防ぐためには相続放棄をしてもらう必要が生じます) - 相続人に相続放棄をさせると、今後形成した財産が継承できない
- 自分で交渉しなくてはならず、不確定要素が多く不安
- 毎月返済をしていかなくてはならない
- 給料差し押さえ等のリスクがある
- 完済するまで個人信用情報がブラックになることがある