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「無剰余取消になったから競売から逃げきれた」ということはありません

住宅ローン問題支援ネット の高橋愛子です。

最近のブログで競売について書くことが何度かありましたが(競売のブログはこちらから)、それを読んでくださった同業の方からこんな話を聞きました。

その方が以前お客様から受けた相談に、印象的な「無剰余取消」についてのものがあったそうです。
相談者Xさんは個人事業主。住宅ローンは毎月返済していましたが、それ以外にもカードローンなど複数の借入れがあり、返済が滞ったことで貸金業者から裁判を起こされて敗訴。その後、強制競売の申立てをされてしまったとのこと。
しかし住宅ローンの残債はまだかなり残っていたため、この競売申立ては無剰余取消になるのではないかと、Xさんは相談に来たといいます。

無剰余取消の第一の目的は、債権者の保護

「無剰余取消」という言葉を聞いたことはありますか?
「無剰余」=剰余(余り)がない。つまり、競売になっても申立て人に配当が回る見込みがない(回収の見込みがない)ようなケースでは、裁判所が競売申立てを却下します。

この制度の第一の目的は、一番抵当権者(優先順位の高い債権者)の保護。次に、後順位抵当権者による意味のない競売を回避すること、です。「無意味な競売の回避」は、要は、競売が成立しても自身は1円も回収できないことが見えている後順位抵当権者が、嫌がらせのためにするような競売申立ては裁判所が認めない、ということです。
いたずらに競売申立てをすれば、債務者が任意売却しようとするのを妨害する可能性もありますから、これも一番抵当権者の保護につながる部分ですね。

抵当権がなくても競売申立てはできる

一般的に皆さんが認識している競売は「担保不動産競売」が大半で、これは、住宅ローンの債権者が残債回収のために、不動産に設定した抵当権を行使して競売にかける手続きです。この時の債権者は一番抵当権者で、通常は住宅ローンを貸している金融機関です。

しかしXさんのように複数の借入れがあり、滞納して期限の利益を喪失してしまった場合、債権者は担保権を持っていなくても「債務名義」(確定判決や支払督促、公正証書、和解調書といった公文書)を取得すれば財産の差押えが可能です。不動産に抵当権をつけていなくても、該当債権者は債務者の財産である不動産の競売申立てをすることができてしまいます。これを「強制競売」といいます。

「無剰余取消=競売からは逃げ切れた」?

全体で見ればあまり数は多くない強制競売ですが、この申立てに関しては無剰余取消になるケースが割とあります。仮に競売になっても、売却代金から諸費用を差し引くと金額は下がっていくため、申立てた債権者に配当が回らないと考えられることが多々あるからです。

冒頭のXさんも、実はこの点に少し期待していたようです。
「状況からしておそらく無剰余だろうから、裁判所は申立てを却下するのではないか。そうなれば競売から逃げられる!」
結果的には、Xさんの強制競売は裁判所に却下されたそうです。しかし、Xさんの理解に誤解があることは、本人にしっかり伝えておく必要があります。

債権者が取消を回避することもできる

無剰余取消は、今後すべての競売について当てはまるわけではありません。Xさんはここを誤解していました。
今回の申立ては却下されましたが、一旦、無剰余取消で競売回避ができたとしても、住宅ローンがある限りは状況次第で再び競売申立てをされる可能性はあります。また、債権者が取消通知を受領してから一週間以内に以下いずれかの措置を取れば、取消を回避することもできるのです。

・申出に相当する保証を提供する
・剰余が出る見込みがあることを証明する
・優先債権者の同意を得ていることを証明する

詳しくは
・裁判所のHP 無剰余取消しを回避する方法について
以前のブログ(【競売】無剰余取消しについて)

をご参照ください。

債権者と債務者の関係性は、謄本だけではわからない

ここまで読んでこられて、「そもそも、1円も回収できない可能性のほうが高いのに、なぜ後順位抵当権者は競売申立てをするんだろう?」と疑問に感じている方もいるかもしれませんね。
その疑問はかなり核心を突いていると思います。
債権者と債務者の関係性というのは、正直なところ、登記簿謄本を見ても予測がつきません。返済途中で何かトラブルが生じ、人間関係も信頼関係も壊れたまま返済だけが続いている、というのも、そんなに珍しいことではありません。

カネ“勘定”よりも“感情”のほうが先に立って、どうしてもこの債務者をこらしめてやりたい、追い出したい。
そんな強い思いを持っているとしたら、債権者は上記の措置を取ることもあります。根深い感情のもつれがあるならなおのこと、たとえ無剰余取消で競売を回避できたとしても、根本的な問題は何も解決していないと考えたほうがいい。その点を、あまり安易に捉えてはいけないと思っています。
無剰余取消は、債務者救済のためのものではないのです。

債権者との和解も視野に入れることを勧める

私は、Xさんのようなご相談を受けた時には、まず競売評価額の予測査定を行い、そこから、競売原価、売却基準額、買受可能額の予測を立てます。そして無剰余になるかどうかギリギリのところを判断しているのですが、とはいえ、債権者が本気を出せば、競売続行になる可能性はふつうにあるわけです。
お互いの感情面は計り知れませんから、あくまでもケースバイケースではありますが、私はもうひとつのアドバイスとして、任意売却をして債権者との和解も視野に入れたほうがよいのではないでしょうか、ということも、相談者の方にはお伝えするようにしています。

 Xさんは結局、また別の後順位抵当権者から強制競売を申立てられ、再び無剰余取消となったものの、申立て人がいくらお金を出しても自分が落札すると動いたことで競売が成立。同業の方が後で聞いたところでは、Xさんは申立人との間にかなり多くの金銭トラブルを抱えていたということでした。


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