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悪徳不動産業者の手口に騙された時、「罪の根源」とは何なのか?

住宅ローン問題支援ネット の高橋愛子です。

昨年12月のものですが、こんなニュースがありました。

「不動産投資向け隠し虚偽の書類作成 詐欺未遂で男女7人を逮捕」

 投資物件購入のために、書類を偽造して住宅ローン融資を受けようとしたという、組織ぐるみで行われた詐欺事件。この会社の顧客が「これは犯罪になるのではないか?」と途中で気づいて金融機関に連絡したことで発覚。詐欺未遂の容疑で7人が逮捕された、というものです。

不動産投資物件を買うために住宅ローンを使うことは、住宅ローンの契約(金銭消費貸借契約)に違反します。そして収入証明等の書類を偽造して融資を受けることは、違法行為です。
しかし、それを知らずに悪徳不動産事業者などの口車に乗せられて住宅ローンで投資物件を買ってしまったという方は、実は多い。当NPOにも、月平均でもそれなりの数の相談者の方がいらっしゃいます。

不動産売買は動く金額が大きいため、消費者を守るために「宅地建物取引業法」(宅建業法)があるのですが、一般消費者が法律内容を深く知っていることは、あまりありません。ましてや何か不動産トラブルが生じたときに、身を守る武器としてこれを使えるほどの知識は持ち合わせていないのが普通です。
それゆえに、悪徳の〝プロ〟はここを消費者の弱みとしてつけ込み、「住宅ローンで投資物件を買っても大丈夫ですよ、みなさんやってますから」と言いくるめてしまう。

住宅ローンの契約違反が発覚すれば、融資金全額の一括請求になるだけでなく、書類の偽造までしていたとしたら犯罪者になってしまう可能性もあります。その筋のプロがアマチュアを騙すなど、簡単なことなのです。

「知らせた人物まで書類送検になった」

今回の事件で私が驚いたのは、「犯罪に当たることに気づいて金融機関に連絡した」という顧客の女性まで「詐欺未遂容疑で書類送検」になった、という部分です。

報道では書類送検になったという事実しか書かれていませんから、経緯がどうだったのかはわかりませんが、途中で気づいて連絡したのに、その人まで書類送検されたことには、驚いたというよりも、少し怖さを感じました。

詐欺の首謀者たちが逮捕されるのは当然です。また、先ほども書いたように悪徳の手練れがアマチュアを騙すのは容易いですから、いわゆる〝専門家〟への素直な信頼感から丸め込まれても不思議はありません。
書類送検になった女性が自ら企てたことだったのか、自分も率先して偽造に加担していたのか、私が考えてもわかるはずもありませんが……。

息子が犯罪者になってしまうのでは!?とパニックに

NPOの最近の例では、息子さんが住宅ローンで投資物件を購入してしまい、それを知ったお母様が、息子が犯罪者になってしまうのではないかと慌てて相談に来た、ということがありました。
息子さんにはまだ金融機関からの調査は入っておらず、一括請求が来たわけでもありませんでしたが、お母様がインターネットでいろいろと検索したところ、「住宅ローンで投資物件購入」関連のネガティブ情報が山ほど出てきて、「詐欺罪に問われる」「自己破産もできない」等々を目の当たりにし、絶望。
借金は仕方ない。でも息子が犯罪者になってしまうのでは!?という恐怖感から食事も喉を通らず、夜も眠れず、パニック状態になっておられました。

騙しの罠から自力で脱することは想像以上に難しい

当事者の方々は、自分がしてしまったことを後悔しながらも、犯罪者になってしまうのではないかという恐怖心から相談にも来られず、加えて自己破産の免責すらおりないかもしれないと、どん底まで落ち込んでいらっしゃることがほとんどです。

でも、私たちが今まで解決してきた事案において、たとえ免責破産申請が通らず自己破産ができなかったとしても、詐欺を理由にできなかった、という方はいませんでしたし、逮捕者や詐欺罪で訴えられた人も、これまで一人もいらっしゃいません。

騙された全員が全員、不動産業者に言われるがまま、丸め込まれて住宅ローンを申請し、投資物件の購入に至っていますが、途中、何か疑問に感じることがあったとて、一度騙される罠にはまったら、とても自力で抜け出せるものではありません。騙しのプロの手口とは、そういうものなのです。

「罪に問われるべきこと」の根源は

冒頭の事件で書類送検になった女性については、詳細もまったくわからないのでなんとも言えません。
しかし一方で、黒い闇に気づかず、プロの手口に絡め取られて嘘の上塗りをさせられ続け、どんどん追い込まれていった私たちの相談者のような方たちは、「違反」と言えども、それは罪に問われるべきことなのだろうか――と、個人的には感じます。

先ほどのお母様の件は、丁寧にお話をうかがい、「犯罪者になることはまずないですから、安心して睡眠をとってください。ご飯も食べてくださいね」と、まずは少しでも安心していただけるように声をかけました。お母様は泣いておられました。

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