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個人の信用スコア閲覧サービスは多重債務などの抑止力になるか?

住宅ローン問題支援ネット の高橋愛子です。

220241128日から、信用情報機関であるCIC「クレジット・ガイダンス」という新サービスを始めました。
これは、消費者個人が自分の「信用スコア」を閲覧できるもので、クレジットカードの利用状況からその人の信用力を査定し、点数で示します。点数が高いほど、信用力も高くなる、というものです。

 CIC83000万件もの登録情報を元に、年齢、性別、職業、年収などは考慮せずあくまでも取引履歴だけを見て客観的なスコアを200800点で算出。
これまで、住宅ローンを組む時などに金融機関が信用情報を得て与信判断に利用したり、消費者向けにスコアを算出、提供している民間の貸金業者はありましたが、CICのような国指定の機関が乗り出すのは初めてのこと(CICは、「割賦販売法および貸金業法に基づく指定信用情報機関として指定を受けた唯一の指定信用情報機関」です) 。
海外ではこういったクレジットスコアリングはもっと身近なものだそうですが、日本でも、国が乗り出すことで多少なりとも認知度は高まっていくのかもしれませんね。

「でも、ブラックにはなりたくないんです」

そんなニュースを読みながら、当NPOにいらっしゃる相談者の方のことを考えていました。

私共にご相談にいらっしゃるのは言うまでもなく、住宅ローンが払えなくなったとか、もう自己破産するしかないかもしれない……といった深刻な問題を抱える方が大半です。
そのようなギリギリの状況のなかで、たとえば任意売却の提案をする段になった時に、かなり多くの方がおっしゃるのが、「でもブラックにはなりたくないんです(ブラックリストには載りたくないんです)」ということです。

 精神的にも大変な状態なのに、任意売却について同時に理解するのも難しいとは思います。
ただ、「オーバーローンのため、任意売却しても足りない返済分については、改めてローンを組み、分割で返済できる」と誤解されているケースは割とあって、ここを安易に考えてしまうために、悩みや迷いが一層深くなってしまう相談者の方を、私たちは何人も見てきました。

物件を売却しても、足りない分は一括で返済しないと抵当権は外れません。債務者が差額分をさらに誰かから(カードローンなどを使うなども含め)借入れするといった方法が取れればよいですが、オーバーローンが多額の場合は、なかなかそうもいきません。

結局、一括では返せないため金融機関は抵当権を行使し、担保物件を競売にかけて回収。「オーバーローンでの任意売却」の難しいところですが、この状態まで事態が進んでしまう頃には、すでにローンの滞納が続いていて、一括請求がされている状況でしょう。
これがいわゆる「事故」。つまり、「ブラックリストに載る」ということです。

信用情報にひとつ傷がついても生活に支障が出るわけではない

実際に「ブラックリスト」というリストは存在しません。ですので、このフレーズが意味するところは冒頭で書いたCICや、全国銀行個人信用情報センターといった機関に登録されている個人の信用情報に「事故記録」が載る、ということです。

私共の相談者の方にも、残債が一括返済できない場合は信用情報に傷がついてしまうような手続きが伴いますよ、ということは必ずお伝えしています。その際、「ブラックになるとクレジットカードって止まりますよね」といったことをおっしゃる方がいるのですが、ここも誤解のあるところで、ブラックになった=クレジットカードが全部止まる、というわけではありません。

ブラック、事故、など言葉が強いので不安や恐怖が先行することはとても理解できます。でも、クレジットカードの話で言えば、自己破産の場合はカードはすべて回収されてしまいますが、ブラックリストに載ったら必ずカードが使えなくなるということではない。信用情報にひとつ傷がついたとしても、それが原因で生活に支障が出るわけではありません。

事故記録は一生残るものではない

ブラックになってできなくなることは、簡単にいえば新規の信用取引です。
つまり、「新たな」借入れや、携帯電話の分割購入などはできませんし、当然住宅ローンも組めません。クレジットカードは、利用しているカード会社に対しての滞納や任意整理等をした場合は使えなくなりますが、別のカード会社のカードは使い続けることができるのがほとんどです(ただし、更新ができない場合があります)。

逆にブラックになっても引き続きできることは、信用情報を参照されないもの。デビットカードやキャッシュレス決済は使えますし、携帯の契約や保険の加入もできます。就職や転職に何か制約がかかることもありません。
また、一度載った事故記録は一生残るものではなく、一定期間(5年~10年程度。状況により異なります)で消去されます。

自分にとっての正解は何なのか? こだわり過ぎは捨てて

ただ、新たに住宅ローンが組みづらくなるのは確かなので、いまの住宅ローンでは絶対にブラックにはなれない――と、かなり無理をし続けた結果、生活破綻してしまう方がいらっしゃるのも事実。でもその破綻で心身ともに打撃を受けることを考えると……自分にとっての正解は何なのか、時に冷静になって考えることは必要なのではないでしょうか。

信用情報は、それはきれいに越したことはないですし、ブラックにもならないほうがよいとは思います。でもそこにこだわり過ぎるあまり、問題の解決からはどんどん離れて自分で自分の首を絞め、追い込んでしまうようなこともある。これは、ぜひ理解していただきたいことです。

 CICの話からついいろいろと思いを巡らせてしまいましたが、自分の信用スコアを見て自分の立ち位置を知ることが、借入れし過ぎや多重債務にならないための抑止力になればいいと思います。
私も、試しに自分のスコアを取ってみます!

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