住宅ローン問題支援ネット の高橋愛子です。
11月4日のブログ「住み続けること」にとことんこだわった、損得抜きのリースバック」で触れた「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)付き個人再生」(以下、住宅ローン特則付き個人再生)について、もう少し詳しく知りたいとのご質問をいただいたので、このブログでも説明しますね。
「住宅ローン特則付き個人再生」とは、住宅ローンだけを残して、その他の債務を丸ごと整理する、いわば個人版の民事再生(個人再生)のことです。
個人再生は「債務整理」のひとつですが、同じ債務整理でも、自己破産は耳にすることが多いかもしれませんね。
この2つの違いとしては、自己破産は抱えるすべての債務が対象になりますから、住宅ローンだけ「整理」から除外する、といったことが認められません。つまり、家を残すことはできません。
ですが、個人再生の場合はそもそもの主旨が「債務者の経済状態を再建すること」なので、この観点から、生活基盤となる住宅は残せるようにと、住宅ローンについては例外的にこの手続きが適応されます。とにかく家を残したい、という場合はこれを検討できるとよいと思います。
代位弁済後に個人再生の申立てができる?
ただし、条件はいくつかあります。
①減額対象になる債務が、住宅ローンとしての借入れかどうか。
②個人再生の債務者が居住用として使っている物件かどうか。
③個人再生の申立人(債務者)が所有している物件かどうか。
④対象住宅は住宅ローン以外の担保になっていないか。
⑤住宅ローン滞納による代位弁済後、6ヶ月以内に個人再生の手続開始の申立てをしているかどうか。
①~④は、整理したい債務は住宅ローンなのか、物件は実際に個人再生の当事者名義で、居住もしているのか、家を担保にほかの債務はないか――ということですから、理解しやすいものだと思います。では⑤はどうでしょうか?
「住宅ローン滞納による代位弁済」とは、住宅ローンが払えず一定期間の滞納が続いた時に、保証会社などの第三者が、債務者に代わって(わかりやすく言えば立替えて)銀行などローンを貸している金融機関に一括返済することを言います。
この時点で債務者は「期限の利益喪失」となり、債権者が金融機関から保証会社に代わって〝立替え分〟の一括返済を求められます。これを払えなければ保証会社は抵当権を実行し、競売の申立を行う。状況から考えて数百万~数千万円の一括返済は現実的ではありませんから、私たちがよくご相談を受ける話の流れになっていくわけです。
6ヶ月以内の申立てが認められれば〝巻き戻し〟が可能に
しかし⑤の後半部分の「6ヶ月以内に個人再生手続の開始の申立てをしているかどうか」とはどういう意味でしょうか。
実は、代位弁済が行われてから6ヶ月以内に、裁判所に「個人再生手続き開始の申立て」をし、認められれば、「住宅ローンの巻き戻し」が可能になります。
①~④を満たしたうえで⑤の申立てをして許可がおりれば、住宅ローン特則付き個人再生の対象となり、保証会社による代位弁済はなかったものにできる。住宅ローンは金融機関に戻り、債務者は再び金融機関に返済をしていくことになるのです。家が競売にかけられてしまっていても、落札されていなければ取り戻すことができます。
競売になっていても間に合うかもしれない、一度のチャンス
私も以前相談を受けた方に、巻き戻しの提案をしたことがあります。
その方は多重債務で住宅ローンも何度も滞納し、相談にいらした段階で期限の利益喪失になっていました。いろいろな不動産業者に相談もしたそうですが、例外なく「競売は免れないからもう売却するしかない」と言われ、それでも諦めきれずにネット検索で見つけた当NPOに連絡してくださいました。
お話をうかがったところ、タイミングとしては代位弁済から6ヶ月以内。不動産以外にも多重債務がある状態だったためさっそく信頼する弁護士を紹介し、要件的に申立て可能であることがわかったので手続き開始となりました。
結果、住宅ローン特則付き個人再生が成立して住宅ローンは巻き戻り、多重債務は再生計画にのっとって圧縮されて、3年分割で返済することで落着。もちろん、最初の3年間は住宅ローンと圧縮債務、両方を払い続けなければならないのでとても大変ではあります。安定した収入がないと難しい面もあるかもしれませんし、再び滞納状態になれば二度目の巻き戻しはありません。
ですが、なんとか頑張って家を残したい人や、覚悟を持って個人再生に挑みたいという方にはとてもよい救済策だと思います。
代位弁済になって精神的にも打撃を受けているところに、一筋の光明。一度はチャンスがある。競売になっていても間に合う可能性がある。
人生において何を大事にするか、ということに通じる話だと思いますが、「家」への価値観は本当にさまざまですから、私たちも相談者の方のお話をよくよく聞いた上で、この一度のチャンスを生かしきれるように、住宅ローン特則付き個人再生の得意な弁護士をご紹介させていただいています。
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